和解条項

(注)個人を特定する情報及び具体的事実に関わる内容については,掲載を控えています。

和解条項

第1 原告ら及び被告大津市の和解の前提となる当裁判所の判断

被告大津市は,亡くなられた生徒(以下「本生徒」という。)の自死につき,安全配慮義務違反があり,原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害を賠償する責任を負う。その理由の骨子は,次のとおりである。

当裁判所が,原告ら及び被告大津市の和解において,大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会作成に係る調査報告書(乙イ26)に基づき,認定した事実は,以下のとおりである。(なお,以下の認定事実は,原告らと分離された被告らとの間の事実認定を拘束しない。)
(中略)

(1)

平成23年10月以前から,いじめを苦にした児童及び生徒の自殺が報道されていた。

文部科学省は,平成23年10月までに,各都道府県教育委員会教育長等の各教育関係機関に対し,「いじめの問題への取組の徹底について」(平成18年10月19日発出,18文科初第711号・文部科学省初等中等教育局長通知),「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日発出,18文科初第1019号・文部科学省初等中等教育局長通知),「『平成21年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』結果について」(平成22年9月14日発出,22初児生第25号・文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)等の通知を発出するなど,いじめが児童及び生徒の心身の健全な発達に重大な影響を及ぼし,自殺等を招来するおそれがあることを前提として,いじめへの対応について注意を促してきた。(甲408~411)

このような状況に鑑みれば,いじめを受けた児童及び生徒の担当教諭及びその他学校職員は,一般的に,いじめを要因として,いじめを受けた児童及び生徒の自死が生じうることを予見することができる状況にあったというべきである。

(2)

前記2(1)(2)の事実によれば,本生徒は,いじめ行為を受けており,自死に至る可能性のある精神的苦痛を受けており,また,前記2⑶のとおり,担当教諭やそれ以外の職員も,本生徒がいじめ行為を受けていたと認識していたものと認められる。

仮に,担当教諭及び担当教諭以外の職員において本生徒がいじめ行為を受けているとの認識を有していなかったとしても,少なくとも担当教諭らが本生徒を少しでも注意深く観察したり,各教職員間で情報を共有していれば,担当教諭らは,本生徒がいじめを受けていると認識することができたというべきであるから,この点自体に過失があったというべきである。

そして,担当教諭らが本生徒に対する前記2⑴のいじめ行為を認識していれば,本生徒による前記2⑵の挙動を充分に把握することができ,また,学校が前記2⑶の事情を把握していることに併せて鑑みれば,本生徒が希死念慮を抱き自死に至ることも充分に予見することができたというべきである。さらに,担当教諭らがそのような事態を予見した上で,本生徒や他の生徒からの訴えに注意深く耳を傾け,本生徒に対するいじめ行為に関し,生徒らに適切な指導をしたり,本生徒がいじめ行為を受けていることを原告らに連絡するなどの措置を講じていれば,本生徒が自死に至らなかった可能性があったといえる。

(3)

よって,被告大津市は,本生徒の自死につき,安全配慮義務違反があり,原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害を賠償する責任を負う。

第2 和解条項

1 支払条項

被告大津市は,原告らに対し,既払金(独立行政法人日本スポーツ振興センターからの災害共済給付金2800万円)を除き,本件和解金として,それぞれ650万円を支払う義務(総額1300万円を支払う義務)があることを認め,これを平成27年4月17日限り,原告ら代理人が指定する口座に振り込んで支払う。ただし,振込手数料は,被告大津市の負担とする。

2 謝罪条項

被告大津市は,第三者調査委員会の調査報告書に基づき,以下の2点につき,原告らに対し謝罪を行う。

(1)
別紙1の第1に記載されたとおり,大津市立中学校(以下「学校」という。)が本生徒に対する安全配慮義務を充分尽くさず,また,同人の自死を具体的に予見できたにもかかわらず適切な対応を執らず,同人の自死を予防できなかったこと。
(2)
別紙1の第2に記載されたとおり,学校及び大津市教育委員会が本生徒の自死に際して適切な事後対応を行わなかったこと。

3 広報

被告大津市は,本和解条項の骨子につき報道機関を通じて公表し,かつ,自らが開設するホームページに掲載する。

4 現在までの取組の確認

原告ら及び被告大津市は,被告大津市が,別紙2の第1の経緯を経て,別紙2の第2及び第3の施策事項に取り組んできたことを確認する。

5 再発防止策

被告大津市は,前項の取組が今後も継続して実施されることを希求し,今後も別紙3記載の事項を遵守する。

6 清算条項

原告らと被告大津市は,原告らと被告大津市の間には,本件に関し,本和解条項に定めるもののほかに,何ら債権債務が存在しないことを相互に確認する。

7 訴訟費用

訴訟費用は各自の負担とする。

以上

(別紙1)
謝罪事項

第1 学校が自死の危険に対して適切な対応をとらなかったことについて

  1. いじめ行為を学校として認識していた,又は少なくとも認識することができたのであるから,それらいじめ行為が必然的に被害生徒の心身に重大な被害をもたらし,最悪の場合,児童生徒が自らその命を絶つ危険性があることを予見することができた。それにもかかわらず,自死を予防するための適切な指導及び対応を執らなかった。
  2. 本生徒は屈辱的ないじめを受け自尊感情を傷つけられるなど,いじめ被害を一方的に受け続け,これに何ら抵抗できないまま,孤立を深めていた。そして,担任その他の教員はいじめ行為を認識し,又は少なくとも認識することができたにもかかわらず,関係生徒に対して何ら積極的な指導をせず事態を放置した結果,本生徒は教員にすら対応してもらえないという絶望的な状況に置かれ,精神的に追い詰められた状況に陥っていった。このような状況を学校としては予見することができ,かつ,精神的に追い詰められた本生徒が自殺を図る危険性があることを学校として予見することができた。それにもかかわらず,自死を予防するための適切な指導及び対応を執らなかった。
  3. 本生徒が同人の父方の祖母に対して自殺念慮を表明していたこと,塾の友人という身近な関係者に対して2回目の自殺念慮の表明があったことなどからすれば,本生徒が自殺念慮を抱いていることについて,担任らが適切な調査,通常の観察を行っていれば,本生徒の自殺の徴表行動について把握することができたのであるから,本生徒が実際に自殺する具体的な危険性があることを学校として予見することができた。それにもかかわらず,自死を予防するための適切な指導及び対応をとらなかった。
  4. 担任らは,本生徒の被害状況などについて適切な調査,通常の観察を行っていれば,行動,性格の突然の変化,顕著な行動の変化など自殺直前のサインを把握,認識することができ,その結果,本生徒がいじめを苦に自殺するおそれがあることを学校として充分に予見することができた。それにもかかわらず,自死を予防するための適切な指導及び対応をとらなかった。
  5. (中略)その結果,本生徒が自死に踏み切るほど精神的に追い詰められた危険な状態にあったことは,学校として予見し,又は予見することができた。それにもかかわらず,自死を予防するための適切な指導及び対応を執らなかった。

第2 学校及び大津市教育委員会の事後対応について

1 学校の事後対応の不備について

(1)調査委員会設置に関する説明の欠如

本生徒の父親が,平成23年10月13日,来校し,学校に対して早急に調査を行ってほしいと要望した際,学校は,文部科学省が全国の教育委員会等に発出した「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について(平成23年6月1日発出,23文科初第329号・文部科学省初等中等教育局長通知)」に基づき,その背景に関して詳しい調査を行うに当たって遺族が学校又は教育委員会が主体となる調査を望まない場合等においては,具体的に調査を計画・実施する主体として,中立的な立場の医師や弁護士等の専門家を加えた調査委員会を早期に設置できることを教示すべきであったにもかかわらず,学校及び教育委員会は説示を行わなかった。

(2)調査の打ち切り

本件では,事件発生後直後に生徒から教員に対し,本生徒に対するいじめの事実の申告があり,これを受けてアンケートが実施され,さらに,教員によるアンケートに記名した生徒に対する聞き取りの結果,本件いじめの実態のかなりの部分が明らかとなった。しかし,本件事案に関する大量の情報がありながら,学校には,こうした情報を全て集約して全貌を明らかにしようとなかった。そして,遺族が詳細な調査を懇願するも実施されないまま,平成23年11月上旬,調査を一方的に打ち切った。

(3)関係生徒に対する不適切な対応

前記認定のとおり,学校として本生徒に対するいじめ行為を認識していたにもかかわらず,関係する生徒に対し,その行為を内省させるために重要な契機とするような聞き取り,指導などの対応が充分になされなかった。学校は,把握した事実関係を加害に関与したと疑われる関係生徒に対して伝え,本生徒に与えた被害の実態を伝え,自分の行為の意味を考えさせ,真の謝罪を引き出すよう努力をすべきであった。

(4)家庭の問題という虚構に依拠した対応

学校は充分な調査も行わないまま,平成23年10月末に早々といじめと自死との関係を不明と結論づけた。一方で学校は,本生徒が虐待を受けていたという事実を確認しておらず,学校として「家庭問題」が本当に存在するのかという検討も不充分であった。それにもかかわらず,学校は,いじめと自死との関係を絶ちたいとの潜在的な意向から,本生徒の自死に関して家庭環境に背景的事情があったかのように教育委員会に報告し ,「家庭問題」という虚構に依拠した対応に終始した。

(5)スーパーバイザー(スクールカウンセラー)に対する情報提供及びその助言に依拠した対応

本生徒の自死した平成23年10月当時,学校は,滋賀県教育委員会から派遣されたスーパーバイザー(スクールカウンセラー)に対し本生徒に関する情報として同人の家庭に関する情報を提供した。そして,平成23年10月24日に,学校は,スーパーバイザー(スクールカウンセラー)から,事実確認ができていない本生徒の家庭に関する情報を前提としてその言動に被虐待児特有の特徴があるかのような助言を受け,その結果,学校は,同助言に依拠し,その後も遺族に対して直接聞き取りを行うなどの実態調査や事実確認を行うことなく学校内部で本生徒の虐待認識を強化したため,そのことがその後の展開に重大な影響を与えた。

 

2 教育委員会の事後対応の不備について

(1)教育委員会の不適切な対応

教育委員会として,いじめ行為に関する調査を行うことに当初から消極的であった。教育委員会は本生徒の自死の翌日である平成23年10月12日,学校に対して教育委員会として調査に入らないことを連絡し,重大事態であるにもかかわらず詳細な背景調査そのものを教育委員会として放棄した。前記「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」に基づき,自殺事案が発生した場合には初期調査をすみやかに実施すべきところ,当時の教育長(以下「元教育長」という。)は,指導主事から,学校からいじめの可能性を疑わせる旨の内容の報告があったこと及び調査が必要であると感じる旨の報告を受けながら,また,遺族が直接教育委員会に赴き何度も徹底した調査を望む旨を職員並びに直接元教育長に懇願していたにもかかわらず,教育委員会として主体的な調査を実施せず,むしろその背景調査を学校任せにしたまま,教育委員会は事実調査について学校に丸投げし,教育委員会はこれを追認するだけという消極的な対応に終始した。そして,平成23年11月上旬,教育委員会はアンケートの原本も確認しないまま学校の調査打ち切りを追認し,結果的に不充分な事実把握をもって事態の収束を図ろうとした。

(2)虐待の事実を否定する情報の削除

教育委員会が自ら作成した時系列表において,平成23年10月の作成当初は,小学生であった当時の本生徒について虐待の事実が認められなかったという情報が記載されていたが,その後,平成23年12月19日に更新された時系列表からは同情報が削除された。前記情報は,学校,市教育委員会が自死の原因に「家庭の問題」があるとした意見と矛盾するものであるため,あえて削除されたものと考えられる。これは,教育委員会による隠蔽的行為との非難を免れない対応であった。

(3)元教育長が自死の原因を充分調査確認せず家庭問題にあるかのような公表をマスコミに対してしたこと

元教育長は,平成24年7月12日の会見で「亡くなった子どもが家庭内 でどんな環境に置かれていたのか,家庭内で何が起きていたのか,個人情報で詳しく言えないが,いじめと自殺が直接結びつくとは判断できないと考える」「自殺の原因には学校のほか,家庭などさまざまな要因が考えられ,いじめだけが原因かどうか判断できない」などとコメントした。また,同月17日にも報道陣に対して「文部科学省が示している自殺が起きた場合の調査について,いわゆる3つの背景を調査する必要があると示されている。学校に関する背景,個人に関わる事柄,背景,さらに,家庭に関する背景がある。」と述べた。このように,元教育長は,遺族に対して直接聞き取りを行うなどの実態調査や事実確認を行うことなく,「家庭の中で,亡くなった子どもさんが,どんな環境に置かれていたのか。あるいは,家庭の中でどんなことが起こっていたのかということについて,聞いている部分があるので,そのことも明らかにしていかなければならない。」などと公然と発言し,あたかも家庭内問題が原因で自死が発生したとの認識を強く公に対して示唆した。

3 共通する事後対応の不備について

(1)事実解明の不徹底

学校及び市教育委員会は,平成23年11月上旬,調査を打ち切り,事実解明作業を中途で放棄した。深刻ないじめ行為の存在を強く示すアンケート結果や聞き取りに関するメモ等のいじめに関する有力な証拠がありながら,これらに基づく事実の整理,検討が不充分のまま放置され,いじめの程度や本生徒が自死直前に置かれていた状況,また,関係生徒及び周辺の生徒のいじめへの関与の有無,程度については未解明のままとなり,事案の解明を困難ならしめた。さらに,本生徒の保護者による虐待という虚構に依拠し,いじめと自死の関係への解明に向けた調査が放棄された。学校としては,生徒に対する平穏な学習環境を保持するという,学校の本来的な責務からすれば、積極的な事実解明をすべきであった。

(2)事実解明より法的対応を意識した対応をとったこと

学校,市教育委員会は,事実関係の調査,分析よりも,訴訟に向けた法的責任論を重視する対応に終始した。本来であれば,自死の原因を究明し,再発防止に向けた取組が必要であるにもかかわらず,こうした観点が軽視され,事実解明よりも訴訟対策を意識した対応がとられた。

(3)遺族を尊重した対応の欠如

前記「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」が指摘するように,学校,教育委員会は遺族に対して,調査の目的・目標,調査委員会設置の場合はその構成等,調査のおおむねの期間や方法,入手した資料の取扱い,遺族に対する情報提供の在り方や調査結果の公表に関する方針など,調査の計画について説明し,できる限り,遺族と合意して学校,教育委員会は最大限の配慮をもって臨まなければならない。それにもかかわらず,学校及び教育委員会は徹底した調査を何度も懇願する遺族に対し,調査委員会設置に関する教示をせず,遺族の意思を充分に尊重した対応を行わなかった。

4 総括

以上のとおり,学校及び教育委員会は調査委員会設置に関する説明を行わず,また,事案の解明に向けた具体的な取組も不充分であった。さらに,家庭の問題という虚構に依拠し,「家庭の中でどんなことが起こっていたのかということについて,聞いている部分があるので,そのことも明らかにしていかなければならない。」と,事実確認ができていないことをあたかも事実としてあったかのように世論が誤認する発言を元教育長が公然と行い,家庭内の問題が自死に結びついた可能性もあるとの認識を公に示して遺族の心情を著しく害した。加えて,事実解明よりも訴訟対策を意識した対応を優先させ,遺族の意向を尊重した対応を充分に行わないまま,調査を事実上放棄し,いじめの実態を隠蔽したと捉えられる対応をし,対応を放置するという教育行政においてはあってはならない結果を招いた。

以上

(別紙2)
被告大津市の現在取組中の施策事項

第1 被告大津市が後記第2及び第3記載の施策事項を実施するに至った経緯

被告大津市では,本件に係るいじめの事実関係を調査し,自殺の原因,学校の対応等についての考察等を行うため,市長の附属機関として,平成24年8月に大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会を設置し,平成25年1月に,同委員会から市長に調査結果等の報告が行われた。同報告書には,教員への提言,学校への提言を含む6項目の提言が記された。そして,被告大津市は,同報告書を市ホームページに掲載し,その周知に努めた。

また,大津市議会においては,議員提案により,平成25年2月に大津市子どものいじめの防止に関する条例を制定した。当該条例では,基本理念として,いじめは子どもの尊厳を脅かし,重大な人権侵害であるとの認識の下,被告大津市,学校,保護者,市民及び事業者等は,子どもが安心して生活し,学ぶことができる環境を整え,一人一人の尊厳を大切にし,相互に尊重しあう社会の実現のため,それぞれの責務及び役割を自覚し,主体的かつ積極的に相互に連携して,いじめの防止に取り組まなければならないとしている。

被告大津市では,前記の第三者調査委員会からの提言及び大津市子どものいじめの防止に関する条例に基づき,次に掲げる取組を行ってきた。

第2 被告大津市いじめ対策推進室における取組事項

1 いじめの未然防止に係る取組について

  1. 毎年6月及び10月をいじめ防止啓発月間とし,教育委員会との共催で,市民や子どもを対象としたフォーラムを実施するなどの啓発活動を行っている。中学生が企画したフォーラムでは,全小中学校のいじめ防止に関わる取組を広く市民に伝え,子どもの考えを訴える取組を行った。
  2. 学校等を対象として,いじめの防止のために人権意識の向上に係る啓発及び相談窓口の広報等を目的とした出前講座等を実施している。
  3. インターネット等を通じて行われるいじめの防止について,専門家の意見を聴きながら,各学校・学年等の特性に応じ,きめ細かな啓発活動を進めている。
  4. 大津市いじめ対策推進に係る関係機関連携・協力会議を設置し,弁護士会や法務局,警察等と,いじめ防止のため,情報及び意見の交換を行っている。
  5. 市長部局において「警察への連絡・相談の手引き」を作成し,被告大津市教育委員会を通じて市立学校に配布する等して,警察との連携を強化している。

2 いじめ事案への対処(二重三重の救済システム)に係る取組について

(1)

教育委員会とは別に,市民部に設置したいじめ対策推進室に,弁護士や臨床心理士等の相談調査専門員を配置し,いじめに係る直接相談に応じるとともに,学校,教育委員会で把握したいじめに係る情報についても一元化し,学校,教育委員会とは別の視点で判断することにより,重篤な事態に至ることを未然に防止する体制を整備した。

相談調査専門員による相談窓口については,相談に係る電話料金や郵送料金の無料化,相談対応時間の一部延長,地域巡回による相談対応等により,相談者が利用しやすい環境を整備した。その結果,平成25年度においては,183案件の相談を受け付け,延べ650回の相談・対応を行った。

(2)

いじめ対策推進室で一元化したいじめに係る情報について,必要な調査,支援等を行うため,臨床心理士等,学識経験者,弁護士により構成される市長の附属機関「大津の子どもをいじめから守る委員会」を設置した。当該委員会は,おおむね週1回開催される定例会議において,被告大津市が相談等を受けたいじめ事案について審査等を行い,いじめを受けた子どもを支援し,いじめを解決へと導くために積極的かつ具体的に関わっている。

また,そのほかの委員の活動として,広報啓発・いじめ事案に関わる調整等を目的とした学校,関係機関等への訪問,教育委員会委員等との意見交換等を実施することで,身近で頼れる機関として広く認知され,また,学校等との円滑な連携が図れるよう努めている。

3 いじめに係る事実関係の明確化に係る取組について

  1. 常設の第三者機関である「大津の子どもをいじめから守る委員会」を,いじめに係る事実関係を明確にするための調査組織とすることにより,当事者と利害関係を有しない委員による公正・中立な調査を速やかに実施することを可能とした。
  2. いじめ防止対策推進法第28条に規定する重大事態に際しては,学校又は教育委員会が行う調査と並行して,「大津の子どもをいじめから守る委員会」が調査を行うこととすることにより,調査の公正性及び中立性を確保した。

4 いじめの防止に関する行動計画について

平成26年度からの3年間を計画期間とする行動計画を策定し,いじめ対策に関する施策等について総合的かつ計画的に推進している。行動計画では,その基本方針として第一に,過去の反省を忘れないことを掲げている。

第3 被告大津市教育委員会における取組事項

1 いじめの早期発見に係る取組について

いじめを早期に発見するため,以下のような取組を行っている。

(1)

大津市教育委員会は,教員が感性を磨き,いじめを早期に発見し対応するための各種研修を各学校,教育センター,市内福祉施設等において実施している。

  1. 小・中学校教員による相互の交流研修
  2. 市内の福祉施設等での現地研修
  3. 市内各校のいじめの事例及びその取組に対する事例集を中心とした校内研修
  4. 初任者研修・10年経験者研修といった法定研修の各段階に応じた研修
  5. 夏季休業中における全員研修
(2)

大津市教育委員会は,「いじめに関する研究委員会」を設置し,いじめ対応に関わる有効な方策を検討し,その成果を各小中学校に発信することで教員の指導力や学校の組織的対応力の向上に努めている。

(3)

大津市教育委員会は,教育委員によるスクールミーティングにおいて全小中学校を訪問し,各学校現場の様々な状況把握を行うと共に,直接管理職からの聴取りを行い必要な指導を行っている。

(4)

大津市教育委員会は,市費において臨時講師を各小中学校に53名配置し,各小中学校においていじめ対策担当教員を専任化した。いじめ対策担当教員は,各小・中学校において,いじめ対策を推進し,子どもの変化を早期に把握するため自らも授業中の校内の見回りなどを通して,いじめに関する情報を収集・集約する。また,教員が子どもに向き合う機会を増やすために,特別支援教育支援員を各小中学校に104名,養護教諭の複数配置を中学校7校に対して行った。

(5)

大津市教育委員会は,いじめや学校事故等に特化した部署として学校安全推進室を設置し,子どもナイトダイヤルを含む複数の相談窓口を設けている。

(6)

各小・中学校においては,いじめの早期発見に努めるため,登校から下校にいたる時間帯で丁寧な対応を行うため,地域・保護者の力も借りながら休み時間なども含めた校内及び登下校路の見回り活動を通して複数の者の目での見守りを行っている。また,定期的なアンケート等を実施し,子どもたち自身の声を聞くことを大切にしている。

2 いじめの早期対応に係る取組について

いじめの早期対応を行うため,以下のようないじめの疑いの段階からの対応を行っている。

  1. 各小・中学校において,いじめ対策委員会を設置し,定期的な情報共有及びいじめの疑い段階からの対応協議を行い,専任化したいじめ対策担当教員を中心に組織的な対応を進めている。各小・中学校は,いじめ又はいじめの疑いを発見した場合は,24時間以内に,大津市教育委員会に報告することとしている。その結果、平成23年度のいじめの報告件数が合計60件であったのに対して、平成25年度においては、いじめの疑い段階で合計587件が報告され、その対応について協議を行った。
  2. 大津市教育委員会は,危機対応マニュアルに基づき,学校安全推進室が収集した情報に基づき,いじめ事案の重大性に応じて対応を行っている。重大な事案については,弁護士,臨床心理士,警察官経験者等で組織される学校問題緊急サポートチームを招集するとともに,市長部局の大津市の子どもをいじめから守る委員会との連携を図るなどして,いじめに関する緊急事案に対応している。

3 いじめの未然防止に係る取組について

いじめの未然防止を進めるため,学校現場における以下のような取組を行っている。

  1. 各小・中学校において,いじめ防止対策推進法第13条に基づき,「学校いじめ防止基本方針」を各校の実情に合わせて定め,この基本方針に則して,いじめ防止に努めている。
  2. 「大津市子どものいじめの防止に関する条例」に基づくいじめ防止啓発月間(6月及び10月)を中心とした各校の児童会や生徒会が主体となる取組を行っている。
  3. 各小・中学校において,ピアサポートプログラム,グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニング等の関係づくりの学習に取組んでいる。

以上

(別紙3)
被告大津市における施策事項

第1 被告大津市いじめ対策推進室を中心とした施策事項

1 いじめの未然防止に係る取組について

本件事件の風化を防ぐとともに,子どもをいじめから守り,社会全体でいじめの防止への取組を推進するため,いじめ防止啓発月間(6月及び本生徒の命日である10月)におけるフォーラムの開催などの広報啓発活動を学校や教育委員会と連携して実施するなどにより,いじめの防止に関する啓発を行うものとする。

2 いじめ事案への対処(二重三重の救済システム)に係る取組について

(1)いじめに関する相談体制の整備

専門職を配置したいじめに関する相談窓口を市長部局に設け,いじめの被害者が,保護者,友人,教員,教育委員会等に相談できないケースについても,受け入れ,支援することができるようにするなど,いじめに関する相談体制を整備するものとする。

(2)第三者組織の設置

市長部局で一元化したいじめに係る情報について,必要な調査,支援等を行うため,専門家等により構成される第三者組織を市長の附属機関として設置するなどするとともに,第三者組織から市長に対し,必要に応じて,再発防止及びいじめ問題の解決を図るための方策の提言等を行うことを可能とするなど,より実効的ないじめ対策の実現につなげるものとする。

3 いじめに係る事実関係の明確化に係る取組について

(1)第三者組織による,公正・中立な調査

いじめに係る事実関係を明確にするための調査が必要となったときは,当事者と利害関係を有しない専門家等により構成される第三者組織を調査組織とすることなどにより,組織の構成及び委員の人選の点も含め,公正・中立な調査を速やかに行うものとする。

(2)重大事態の並行調査

市長部局によるいじめに係る事実関係を明確にするための調査(以下「本調査」という。)は,可及的速やかに着手するよう努めなければならない。また,本調査においては,いじめ防止対策推進法第30条第2項に規定する場合のほか,学校又は教育委員会が行う同法第28条第1項の規定による調査と並行して行うなどして調査の公正性及び中立性を確保するとともに,可及的速やかに完了するように努めるものとする。

第2 被告大津市教育委員会を中心とした施策事項

1 いじめの早期発見に係る取組について

子どもの声に耳を傾け,心の叫びや言動の裏側にある感情をしっかりと読みとり,いじめを早期に発見するため,教員の感性を磨くための研修を実施するとともに,組織的な対応を可能とする体制づくりを推進する。

  1. 小・中学校の教員による相互の交流研修や市内の福祉施設等での現地研修,メンタルヘルスや教員間のコミュニケーションに関する研修などを行うものとする。
  2. 教育委員による学校訪問を実施し,いじめの実態等の学校現場の状況把握を行い,学校運営に対する具体的な指導を行うものとする。また,これらの指導的な役割を担うため,定例会のみならず教育委員による協議会等を必要に応じて開催し,情報の共有に努めるものとする。
  3. 大津市教育委員会は,教員の多忙化解消を図ることで,学校で一人一人の子どもたちを丁寧に見守る体制づくりを行うために,学校に対する人的・物的な支援を行うものとする。
  4. 大津市教育委員会は,生徒指導に特化した部署を設置し,相談窓口を設けるなどして子どもの声を聴くことや学校のいじめ事案の対応に関わる指導・支援を行うものとする。
  5. 各小・中学校においては教育相談週間の設定などを行い,子どもの声を直接聴くための取組を進めるものとする。また,教職員自らが子どもたちの変化を早期に把握するために校内外の見回りなどを積極的に行い,そこから得られた情報や子どもたちからの声を校内で共有するため,いじめ対策委員会の定期開催を定着させていくものとする。
  6. 各小・中学校においては,いじめの疑いの段階から子どもから得た情報を管理職を含むいじめ対策委員会を通じて校内で組織的に共有するとともに,具体的な対応方針等についても,いじめ対策委員会での協議を経て組織的な対応を行うものとする。
  7. 各小・中学校においては,いじめの早期発見等のためにスクールカウンセラーから得た情報については,公正な利用を行い,かつ,いじめを受けた子どもやその家族のプライバシーに配慮するものとする。

2 いじめの早期対応に係る取組について

いじめの早期対応を行うため,いじめの疑いの段階からの発見に努め,組織として初期の段階から対応を行う。

  1. いじめ等の問題行動についての情報共有や対応策の協議・検討を行うためのいじめ対策委員会を全小・中学校に設置し,事案発生時のみならず定期的な協議を行うものとする。
  2. 大津市教育委員会は,文部科学省をはじめ各省庁,県教育委員会等から発出されるいじめ対応に関する通知及び研修資料等を活用した各種研修会等を実施するとともに,各校における校内研修や実地指導を通じてその内容の周知徹底を行うものとする。
  3. 市内各校のいじめ事例及びその取組に対する研修を実施し,モデルとなる対応に学びながら各校の対応力を高めるものとする。
  4. 大津市教育委員会は,危機対応マニュアル及び生徒指導担当部署が収集した情報に基づき危機管理チームを招集するとともに,市長部局の大津の子どもをいじめから守る委員会との連携を図るなどして,いじめに関する緊急事案に対し迅速に対応を行うものとする。
  5. 大津市教育委員会は,いじめ事案発生時に学校又は教育委員会が行う調査及び対応について,リーフレット等の配布及び保護者会や三者面談などの様々な機会における説明を通して保護者に周知していくものとする。
  6. 大津市教育委員会は,各校におけるいじめに関する調査等の結果について,個人情報の保護に配慮した上で,関係者に対し,事実関係その他の必要な情報を適切に提供するものとする。

3 いじめの未然防止に係る取組について

いじめの未然防止を進めるため,児童生徒が多様な人との関わりを通して,お互いの存在を実感し,自己肯定感を育み,違いを認識しそれを尊重できるようになるための集団づくりを行う。

  1. 大津市教育委員会は,本件の風化を防ぎ同様の事案を二度と起こさないためにも,いじめ防止啓発月間(6月及び本生徒の命日である10月)を中心に各校の児童会や生徒会が主体となって,児童生徒が自ら各学校でのいじめをなくすための取組を行うものとする。
  2. 関係づくりの学習として,各小・中学校においてグループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニング等の学習に取り組むものとする。
  3. 大津市教育委員会は,地域住民の参加による学校支援を推進するため「開かれた学校づくり」に取り組むものとし,そのために必要なコミュニティスクールや学校支援地域本部等の体制づくりを行うものとする。このことにより,地域の方々の校内外における子どもたちの見守り活動などをより活性化させ,地域から学校への情報提供を行いやすくする。
  4. 大津市教育委員会は,各小・中学校のいじめ防止基本方針に関する取組の進捗状況及び課題を把握するとともに,その評価を市長に報告し,市のいじめ防止行動計画の見直しに反映させていくものとする。

以上

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