意見陳述(第1回口頭弁論)

貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます。

私たちの一人息子が、私たちの前からいなくなってから7カ月余りが過ちました。今だに私たち家族は息子広樹の死を受け入れられず、妻は毎日息子の仏壇にお弁当を作って供えています。
息子はひょうきんな性格で、初めて会った人でも年齢に関係なく直ぐに友達になってしまう子でした。同級生の親御さんや近所の方からも親しみを込めて苗字ではなく「ひろき」と呼ばれておりました。下手なジョークで家族を笑わしてくれる本当に心の優しい子でした。
卓球が大好きで、「また新しいサーブを考えたんや」と得意げにいつも話してくれ、亡くなる2日前にも卓球の試合があり、「今日がんばったんやでー」といって得意げに試合の話をしてくれていました。文字通りわが家のムードメーカーでした。
そんな息子が生まれたときから住んでいるマンションの最上階から飛び降りました。
どんな気持ちでその決意をしたのか。そこには、息子の「いじめ」に対する抗議を、自らの命を持って伝えたかったとしか私たちには思えません。
この裁判では、息子が13歳という短い人生を自ら閉じなければならなかった、その真相を明らかにし、2度と同じような「いじめ」による自殺が無くなる事を求めて行きたいと考えております。

この点について、被告ら、特に被告大津市の答弁書に関して気になったことがあるので、申し述べます。

私たちは、皇子山中学校の教員がさまざまないじめ行為を目にしておきながら、単なる悪ふざけか、いたずら、からかい、あるいは精々軽い程度のいじめとして捉え、事態の深刻さを看過し、またいじめについての生徒さんからの報告に対しても何らの措置もとらずにひたすら楽観的な見方に終始していたことが、大きな問題であると考えています。

しかし、この点について大津市は私たち原告に対して、どの教員が、いつ、どこで、どのようにいじめを見ていたのか、自殺の予見可能性の有無、注意義務違反の事実の有無、被告の過失の有無を証明するように私たちに求めてきています。
一般的に考えれば分かることですが、学校の内部の情報を知りえること自体が私たち原告においては困難なはずなのに、「その証明をしろ」というのは極めて理不尽であると考えます。
その一方で大津市は、いじめの根絶、早期発見・早期対応のための指導方法を 保護者や地域の関係団体の代表者で構成される会議の参加者に示すなどして、再発防止に向けた地域ぐるみの取り組みを行っていると主張しておられます。

しかしここには大きな矛盾があります。

いじめの根絶、早期発見・早期対応のための指導方法を行っていると言うのであれば、まずは本件の徹底した原因の究明が必要なはずです。
なぜいじめを発生させてしまったのか、なぜ早期に発見できなかったのか、なぜ早期に対応できなかったのか、こうした点を徹底的に解明することなくして、「いじめの根絶のための指導方法・対策」などを示すことはできないはずです。

知る由のない学校内部で起きた事実を私たち原告に対して証明を求める以前に、大津市自身が能動的に、なぜこのようなことが起きてしまったのか、「本当に有った事実」と「徹底して調査し尽くした事実」を何一つ隠すことなく白日の下にさらすことが、多くの子供を預かって教育をほどこし、そこに集まってきた子供たちの生命・身体の安全を、万全を期して守る義務のある学校としては当然なのではないでしょうか。

被告大津市は、この当然の調査を実施しているはずです。であれば、この裁判の公平性を保たせるためにも、閉ざされた学校内部のその調査結果を全てこの法廷に提出していただきたいと思います。
その上で、私たちの息子の自殺の原因が何であったのかについて徹底的に議論を行い、真相の解明をしていこうではありませんか。私たちは、今回のような悲劇が二度と繰り返されることがないようにしたいのです。

被告大津市の越市長は、私たちの息子が通っていた皇子山中学校の卒業式に出席され、自らのいじめ体験を話されました。小学校3年生のときと高校1年のときにいじめに遭って死にたいと思われたとのことです。私たちの息子も同じです。いじめに遭って死にたいと思い、そして本当に死んでしまったのです。
いじめ被害によって死にたいという心情が発生することを実体験として明らかにされた越市長が、本日の答弁ではそのことを否定されておられることが信じられません。あのスピーチは政治的なパフォーマンスに過ぎなかったのでしょうか。もしそうだとしたら、私たちの息子の死をパフォーマンスに利用したことになります。それはあまりに酷いことです。

いじめによってこれまで多くの前途ある若者が自殺に追い込まれてきました。私たちの息子が亡くなってからもまだ自ら命を絶つ若者が絶えません。
そのたびに学校は再発の防止を表明してきましたが、しかしそれは一向になくなることなく今日に至っています。今こうしている瞬間も、誰にも言えない苦しみにもがいている児童・生徒がいるはずです。
どうしていじめはなくならないのか。いじめをなくすためには、いじめに対して司法が毅然とした態度を示すことも大切であると思います。
閉ざされた学校内の情報を証明してみろと言われて、それが証明できなければ、息子広樹はただ単に「理由も無く、死にたくなったから自殺した。」ということになるのでしょうか?
「被害者が死んでしまえば真実は明らかにされない。」との定石を、司法の中で当たり前にして欲しく無いのです。
「悪質ないじめで追い込まれた子供の心情を考えれば、自殺への可能性はいつもある。」と考えます。
改めて学校側より真実の情報開示を求めたいと思います。

最後に裁判官の皆様にお願いしたいことがございます。

今回ものすごい勇気を持って、このような「いじめ」が有った事実を、アンケートや直接私たちに伝えてくれた生徒の方々、保護者の方々に対して、「正義」は必ず存在するのだと証明していただきたいのです。
悪いことをしたら必ず罰せられるのだということを伝えていただきたいのです。
そして子供たちにとって、学校が安全である場所にしていただきたいのです。
そのような裁判にしていただくことを、息子「ひろき」に代わりまして強くお願い致します。

何卒宜しくお願い致します。

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