被告大津市、被告少年らの両親、被告少年らに対して、損害賠償を求める。
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皇子山中学校が行った生徒に対するアンケートによると以下の事実が認められる。
訴外広樹が、自殺する前日に、被告の一人に対して自殺の意思を伝えたこと、自殺直前にいじめがエスカレートしていった経緯などからすると、いじめと自殺の因果関係が認められる。
⑴ 学校は、生徒の生命、精神及び財産等の安全を確保すべき義務を負い、他人の生命、身体等の安全の確保に関する規律を習得させる機会を生徒に与えることも期待されている。そして、教員は、学校のこれらの義務の履行を補助する者としての責任を負う(東京高裁平成19年3月28日判決参照)。
⑵ 担任を含む教職員は、教室内や廊下、校庭でのいじめを何度も目撃しながら、これを漫然と見逃してきた。いじめではないかと疑問をもった生徒からの報告があっても、訴外広樹に十分な確認をせず、訴外広樹の死を防止しえた機会を漫然と逃した。
⑶ 皇子山中学校やその教職員らも、多発している子どものいじめを苦にした自殺の事例については研修等を通して熟知しており、そうした事態に至らないように普段から生徒の動向に鋭敏であるべきとの方針で学校運営をしていたはずであり、訴外広樹がいじめに遭っていることを認識したあるいは認識しえた皇子山中学校としては、訴外広樹が自殺に至らないように最大限の注意をする具体的義務があった。これを怠った以上は、訴外広樹の自殺について過失責任を負う。
殊に、本件では、死んだ蜂を食べさせようとするなど悪質かつ重大ないじめが行われていたものであり、皇子山中学校及びその教職員は、生徒らから寄せられた情報によって、こうしたいじめの存在を認識可能だったのであるから、訴外広樹の自殺について過失が認められることは明らかである(福島地裁いわき支部平成2年12月26日判決参照)。
被告少年らは、責任能力を欠いており、この場合、被告少年らの両親は、民法714条に基づく損害賠償義務を免れない。
仮に、被告少年らに責任能力が認められるとしても、被告少年らの両親は、被告少年らの不法行為を漫然と見逃したものであるから、民法709条に基づく損害賠償義務を免れない。この場合に、被告少年らも民法709条に基づく損害賠償義務を負うことは当然である。
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