「いじめ防止対策推進法案」の施行にあたって

もうすぐ息子がなくなって2年が経ちます。そして息子の3回忌を前にして、「いじめ防止対策推進法」が本日施行されます。

息子がなくなった当時、このような法律(いじめから子供を守る法律)が日本になかったことを私は知りませんでした。

息子がなくなった当時、こんなにもいじめや体罰、教師の叱責により多くのかけがえのない命が失われていたことを私は知りませんでした。

息子がなくなった当時、こんなにも多くの遺族が、なぜ子供が死に至ったのか、その真相究明が進まないことに苦しみ、又、多くの子供たちが、いじめや体罰の恐怖に怯え苦しんでいたことを私は知りませんでした。

息子がなくなった当時、学校は安全で安心で、子供に対して勉強だけではなく、その子供の心と体を成長させ、育(はぐく)んでくれる場所だと思っていました。

今一度考えていただきたいと思います。なぜ「いじめ防止対策推進法」がこの日本で必要となったのか。

今一度考えていただきたいと思います。なぜ30年もの間、学校現場で同じ過ちが繰り返されてきたのか。

今一度考えていただきたいと思います。「いじめ防止対策推進法」が施行されれば子供の安全は保障されるのか。

「学校」が、子供の命が危険にさらされる場所がであっては断じてならない!

今回施行されたこの「いじめ防止対策推進法」を受けて、まず何よりも現場の教師の方々はその法の趣旨を正しく理解していただき、「子供の立場に立って子供の命を守り抜くのだ!」という強い使命感をもって、「教育従事者が率先して変わらなければならない」という意識改革をしていただくことが先決だと考えます。

そして今回施行された法律は、多くの子供たちの命を守り、子供たちが安全に教育を受けられる環境を作る為の「担保」となるよう教育従事者は運用しなければならない。

今一度、教育従事者の全てが過去は「子供」であったことを思い出していただき、子供の「心」に向き合って教育に当たっていただくことを強く要望いたします。

心が変われば行動が変わる。行動が変われば学校は変わる。

教師の心が変わらなければ、この新法はただの形式的なもので終わってしまう。

「学校」という学び舎は、教師、生徒の一人一人が、各々の個性を尊重し、人間の尊厳がかけがえのないものであることを学び、勉強だけではない心の学習を含めた「学び」をする場所であると考えます。そしてそれらを学ぶことこそが、将来社会に出た時に多くの人を助ける力になるのだということを改めて認識していただきたいと思います。

日本の学校教育の在り方が、世界の学校に対して見本となるよう、教育関係者は襟を正して子供たちの心に向き合いこの新法の運用にあたっていただくことが、何よりも今まで失われた多くの若い命に対する報いだと考えます。

もう二度といじめや体罰で苦しむ子供の声を聴きたくない。

もうこれ以上いじめや体罰で大切な子供を失い、嘆き悲しむ親の悲痛な思いを聞きたくない。

この法律が正しく運用され、今現在いじめや体罰で苦しむ子供たちを救うこと、この法律が今まで亡くなった子供たちの名誉と尊厳の回復への一助になることを、亡くなった息子と天国にいる多くの子供たちと共にその運用の行方を見守り続けていきたいと思います。

大津市の遺族より

追伸

今回この「いじめ防止対策推進法」の施行と同時に「いじめ防止基本方針」も施行される予定でしたが、「いじめ防止基本方針策定協議会」の議論が長引き、施行日に間に合わなかったそうです。私は、「具体的なガイドラインの無い新法であれば、これまでの状況と何等変わらない。新法の取扱説明書が『いじめ防止基本方針』なのであれば、二度と教育行政や地方自治体が曲解せぬよう、明確な文言で表してほしい。」と訴えてきました。

その為に策定までの時間に遅れが生じることについては、使えない法律が出来ることを考えれば、致し方ないと考えております。しかし遅くて良いものではありません。これまで文科省指針が誤って解釈がなされてきたことと同じ過ちを二度と繰り返さないため、一日も早く具体的なガイドラインを示し、新法の誤った解釈や恣意的な解釈がなされることがないよう強くお願いしたいと思います。

 なお、大津いじめ事件だけでなく、鹿児島県出水市や奈良県橿原市で起きたいじめを背景とする女子生徒の自殺事件や、新潟県上越市内の県立高校で起きた教員の不適切な指導が背景とみられる生徒の自死事件など、全国各地で起きている学校関連の事件について、現地のご遺族と共に文部科学大臣への申し入れや国会議員への陳情、専門家の意見書の依頼など、さまざまな活動を行ってきました。このような活動を行うことができたのは、全国各地のみなさまから寄せられた激励と、多額のご寄付、カンパのおかげです。この場を借りて、厚く御礼申し上げたいと思います。本当に、ありがとうございました。今後も、いじめで苦しむ子どもたちを救うため、頑張って参りますので、ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。